●アンジェス(株):2023/03/01 10:34
エメンド社が臨床入りを目指している治療の対象疾患は、ELANE関連重症先天性好中球減少症です。好中球は細菌感染に対して体を守るという大切な役割を担っていて、好中球が少なくなると感染制御ができず、感染を繰り返し、中耳炎、気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症などを反復します。また、肺炎、敗血症といった重症感染症によって死亡するケースもあります。
現在の治療法は、ST合剤(抗生剤、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)による予防が重要になっています。また、感染症がコントロールできない場合にはG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を使用して好中球の誘導を促します。 但し、高用量の場合は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病への移行に細心の注意を払う必要があります。こうした場合には、造血幹細胞移植も検討するケースとなります。
エメンド社で開発中の治療では、患者から採取した血液から造血幹細胞を分離し、体外でゲノム編集を行った後、患者に輸注して戻します。ゲノム編集された自家造血幹細胞は患者の骨髄に生着し、一度の治療によって、一生に亘って好中球数を正常値に維持することが期待されます。
ワシントン大学のデビッド・デール博士との共同研究では、実際の患者から採取した造血幹細胞を用いてゲノム編集を行い以下の結果を得ております。
①病気の原因となる変異を持つ遺伝子は削除されたが、もう片方の正常な遺伝子は削除されることはなかった。
②異常のある遺伝子が削除された造血幹細胞は、培養容器で培養したとき、もう片方の正常な遺伝子の働きにより、好中球へ分化成熟することが確認された。
エメンド社の手法は、ゲノム編集によって正常な活性を有するエラスターゼを発現させることによって好中球の機能を改善回復させるもので、まさに根本治療に当たると言えます。
こうした研究の積み重ねによって、エメンド社ではELANE関連重症先天性好中球減少症の臨床入りを進めています。社長兼CEOであるデビッド・バラム博士が、2023年1月5日に発表している企業プレゼンテーションの中では、アメリカ食品医薬品局(FDA)に申請する治験届けについては、2022年11月にはプレINDミーティングが行われており、臨床試験入りの申請については、2023年第3四半期の時期に行う予定であると記述されています。