●アンジェス(株):2023/01/15 09:18
アンジェスは2022年9月、新型コロナワクチン開発に伴う高用量製剤に関する治験結果について、海外の分析機関から報告された臨床試験の速報データにより、安全性については確認されつつも、主要評価項目である中和活性及び抗体価が期待する水準には至らなかったことから、新型コロナウイルス感染症(武漢型)に対する高用量製剤を含む初期のワクチンの開発を中止することを発表しています。
この武漢型ワクチン開発の中止に関連してアンジェスの山田社長は、東洋経済の記者から、インタビューを受けています。その中で記者からの「会社の規模以上のことにチャレンジして失敗した、という見方があります」が問いに、山田社長は「アンジェスは金、人の両面でこの開発に多くのエネルギーを注いできた。精神的な影響も非常に大きい。だが、コロナという大変な病気に対し、当社が持つ得意技術であるプラスミドDNAを使って開発したワクチンでやっつけようと、理想を持ってやった大事な仕事だ。私個人だけでなく、アンジェスという会社として悔いはない」と答えています。
山田社長の発言は、開発当事者としての大変だった思いを含めて率直な心情を語っていると思います。が、このことは新型コロナワクチン自体の開発中止を決めたものでないことは、アンジェスが発表している2022年9月のIRでも明らかです。そこには次のように方針が示されています。
❶当社はこれまでの研究開発の知見を活かし、プラスミドの発現効率や導入効率の向上等、プラットフォームの見直しを行い、並行して、将来発する可能性のある新たな変異株を視野に入れ当面、オミクロン株の最新変異株に対しても有効な改良型DNAワクチン研究を開始することを決定いたしました。
❷さらに当社は、ウイルス性肺疾患に対し、広範な免疫応答を刺激し、ウイルスの増殖防止、拡散の阻止が期待される、ワクチンの経鼻投与製剤の研究開始を決定いたしました。改良型 DNA ワクチンとその経鼻投与製剤の研究開発により、安全で予防効果の高いDNAワクチン及び投与方法の実現を目指してまいります。
この方針のもとに、初期ワクチンの中止の教訓を生かし、免疫活性を高める研究を行いながら、今後も続くことが予想される新型コロナ感染症と、将来の新たな感染症に対するDNAワクチンの開発を進めていって貰いたいと思います。