●アンジェス(株):2021/03/06 04:13
【医薬通信社】
アンジェスの新型コロナワクチンP1/2試験で好結果
森下竜一氏 (臨床遺伝子治療学寄附講座教授)に聞く(その3)
今、メディアで話題になっている新型コロナウイルスの変異体のうち、南アフリカ型では、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどの先行したワクチンで中和抗体の活性が半分以下に落ちるという報告がされており、今後、ブラジル型やさらに変異が進んでいった場合、「ワクチンの効果が弱くなってしまう危険性がある」と危惧する。
こうした中、森下氏らは変異に素早く対応できるDNAワクチンの特徴を生かし、既に南アフリカ型に対応できるDNAワクチンのデザインに着手しており、「さらに、ブラジル型などの新しい変異型に対する予防効果をDNAワクチンで検討していく」予定である。
国産ワクチン開発継続のメリットの一つに、日本型の新型コロナウイルス変異への対応が挙げられる。
森下氏は、「今後、日本型の新型コロナウイルス変異が顕在化してきた場合、日本国内でワクチン開発ができなければ、日本型変異に対して十分効果のあるワクチンを作ることができない可能性があり、世界的に批判を浴びる可能性がある」と指摘する。
また、アデノウイルスベクターを用いたワクチンは、Sタンパクを発現させるために用いているアデノウイルスに対する抗体が生成されることが知られており、もし、毎年新型コロナワクチンの接種が必要になるとすれば、効果が落ちてきてワクチンの有用性が発揮されない懸念がある。
こうした理由から、RNAワクチンに比べてDNAワクチンには、「保管の容易さ」と「長期備蓄可能」などのメリットがある。現在、ファイザー社のRNAワクチンの技術では、-70度Cでの保管が必要で、保管時の活性化の消失もあり、不安定なRNAワクチンは扱いにくい。
その点、安定なDNAワクチンは、保管温度も-20度Cで、保存期間も5年間と長い。保存期間が長いDNAワクチンは備蓄に向いているので、「今後、ウイルスの変異に応じたDNAワクチンの備蓄も選択肢の一つになるだろう」との見通しを示す。
また、DNAワクチンの保存温度は、これまでの検討から現実的には冷蔵でも安定していることが判っているため、「これからは一般病院で行われている冷蔵保存を目指していく」。