●アンジェス(株):2020/07/26 06:24
【藤和彦/経済産業研究所上席研究員】
大阪大チーム、コロナの
画期的“DNAワクチン”開発に邁進!!(その1)
大阪大学の森下氏が開発しているのは従来の弱毒化ワクチンや不活化ワクチンの鶏卵を使う方法ではなく、DNA(遺伝子)ワクチンという新しい製造法である。DNAワクチンとは、ウイルス本体ではなくウイルスの遺伝子情報のみを入れる方法である。ウイルスの遺伝子情報を入れたプラスミドDNAと呼ばれるベクター(運び屋)を体内に入れると、ウイルスが細胞に侵入する際に用いるSタンパク質(表面のトゲの部分)が大量に発生する。体内にSタンパク質が大量に存在するようになれば、これに対して抗体ができるというわけである。
DNAワクチンの場合はプラスミドDNAを大腸菌の中に入れて大腸菌ごと増やせることから、大量生産が容易であり、製造コストも安い。DNAワクチンは保存しやすいとされている。「ウイルスが変異してワクチンの効力がなくなるリスクはないか」との懸念について、森下氏は「現段階ではSタンパク質に関する変異が生じておらず、今後もその可能性は低い」とワクチンの有効性に太鼓判を押している。
森下氏のチームは6月30日から治験を開始しているが、遺伝子を用いたワクチン開発は米国勢が先行している。米バイオ医薬企業のモデルナは5月18日、「初期段階の治験で被験者45人全員に抗体ができた」と発表した。モデルナが採用しているのは、タンパク質をつくる信号であるメッセンジャーRNAを体内に入れて抗体をつくるという方式である。DNAとメッセンジャーRNA、どちらも遺伝子情報だけを使うことから、ウイルスが体内に混じるという危険性はない。違いは生産能力とコストだが、森下氏によればDNAワクチンに軍配が上がるという。