●アンジェス(株):2022/08/10 09:38
昨日、決算報告を前に「I」さんが、一つの懸念事項として「エメンド社を完全子会社した直後は約50人体制であったのが、1年後のこの春先には一気に、倍の100人体制の研究陣としたが、今までの倍額費用を、どのようにして賄うのか?」と問題提起をしています。「I」さんも、「アンジェスもこの大拡張に踏み切った、経営的裏付けなくしてやれるお話にならないと思います」と指摘しています。このことに意見を申し上げたいと思います。
エメンド社の人員構成は、米国にある本社の人員は数名ですが、大半の90名以上はイスラエルにある研究機関のスタッフです。人的構成も、計算生物学、タンパク質工学、RNAガイド設計の分野で90人以上の科学者が集まっていますが、博士号を持っている人員は50名以上と言われています。
では何故、アンジェスが子会社化した以降、大幅に研究スタッフが増えたのかと言えば、親会社のアンジェスが研究費用を捻出してくれるので、今後は心配ないということで人員を増やしたのかと言えば、それは違います。研究陣の拡張、拡大は経営戦略に係ることなので、エメンドの裁量だけではなく親会社アンジェスとの協議が前提となるのです。
では、博士号を持っている人が50名以上もいる100名近い研究者を要するに至った背景と必要性について言えば、エメンドの研究開発の柱になっているゲノム編集技術の飛躍的な前進があったことで、これまで基礎研究を積み重ねてきた遺伝子病や眼科、そして肝臓や癌の領域での治療法の確立や創薬の研究が実用化につながる展望の道筋が見えてきたことと関係があるのです。
その契機となったのは、CRISPR-Cas9システムがもつ、偶然似たDNA配列を持つ関係のない遺伝子を編集してしまうオフターゲット効果があることから、人への遺伝子療法への妨げになっていたのですが、エメンド社では各遺伝病を理解し、次に最適な編集戦略を考案し、世界クラスの多面的なチームを結集し、従来のCRISPRツールを進化させ、あらゆる遺伝病に合わせてカスタマイズされたまったく新しいヌクレアーゼを作成したのです。
つまり研究段階で留まっていたものが、実用化への道筋につながりビジネスプランの実現に手を掛ける見通しが出来たことが背景にあり、研究陣も拡充されたのです。いつまでもエメンドは「金食い虫」ではないのです。