●アンジェス(株):2021/10/06 10:59
【デイリー新潮】
国産ワクチンは承認条件緩和でも
今冬に間に合わず.....海外製ワクチン有効性の高さも壁(その2)
そのため、新方式では参加者全員がワクチンを接種し、中和抗体が既存のワクチンと同等以上にできるかどうかで判定するようにした。少人数で実施でき、短期間で効果を見極めることが可能となる。偽薬を使わないことから、参加者も集めやすくなるメリットもある。
厚生労働省の新方式は、国際的な薬事規制当局が6月下旬に策定した新方針にも沿っていることから、日本の製薬企業はこの方式で承認されたワクチンを海外でも販売できる。
<アンジェスの蹉跌>
たしかに大きな前進だが、「この動きがもっと早くに出てくればよかったのに」と、誰もが思うだろう。筆者の念頭にあるのはアンジェスの蹉跌だ。
大阪大学の森下竜一教授が率いるバイオ・ベンチャー企業アンジェスが開発しているのは、ウイルスのDNAを人に投与し、人体の中でDNAからmRNAを介して抗原を合成する「DNA型」だ。世界でいち早くワクチン候補をつくり出すことに成功し、昨年6月に国産ワクチンとしては初めて、30人を対象とした臨床試験を開始していた。だが医薬品医療機器総合機構が、「効果などを評価するためには数万人規模の治験が必要」との方針を堅持したため、「小規模の治験の結果で条件付早期承認を得て、今年夏頃までにワクチンを実用化する」という戦略は破綻した。アンジェスも厚生労働省から約94億円の補助を得ているが、実用化の目途は立っていない。
承認の条件は緩和されたものの、海外製ワクチンの有効性の高さが次の壁となって立ちはだかっている。アンジェスが開発しているワクチンの有効性は73%にとどまっており、90%以上の有効性を誇るファイザー製などと比較すれば見劣りする。このため、アンジェスはファイザー製等と同程度の効果を得ようと、8月中旬から高用量製剤を用いた初期の治験を始めた。
最も先行しているとされる塩野義製薬についても、同様の問題がある。開発中のワクチン接種による中和抗体価が十分に上がらなかったことから、ワクチン製剤を変えて初期の治験を実施することになった。完成の時期が遅れることは間違いない。
このように、国産ワクチンは今冬までには間に合わないのが実情だ。