●アンジェス(株):2020/05/27 06:00
<5/27日経新聞朝刊より抜粋>
世界の製薬大手が新型コロナワクチンの開発を競うなか、そこに割って入ろうとする国産プロジェクトがある。バイオ企業のアンジェスと大阪大、そしてタカラバイオなどが取り組む「DNAワクチン」だ。7月から臨床試験(治験)に入り、承認申請が順調に進めば年内にも20万人分を量産するメドをつけた。来年の早い時期にも、医療現場で使えるようになると期待されている。
DNAワクチンは新型コロナの遺伝情報の一部を体内に送り込み、免疫にその情報を教えておくことで、本物のウイルスが体内に侵入したときに素早く免疫が攻撃する仕組みだ。鶏卵などでウイルスを培養する必要がないため、製造期間を2週間ほどに短縮できる。
これを可能にするのがタカラバイオの遺伝子「編集」技術だ。同社は正確な情報を組み込んだDNAを大量に製造し、細胞内に運ぶベクター(運び屋)技術に強みを持つ。試薬やベクターの培養設備も自前で抱え、製薬会社や大学から医薬品の製造を受託する。
遺伝子治療薬の第一人者である大阪大の森下竜一教授が、真っ先に声をかけた理由はこれだ。タカラバイオの仲尾功一社長は「培った技術を応用すれば問題なく量産できる」と話す。AGCの米子会社もワクチン原料の製造をタカラバイオから請け負い、協力する。
日本政府は感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)などに資金を拠出し、国際協調を模索する。しかし国主導で開発された海外製ワクチンが日本に速やかに輸入される保証はない。
タカラバイオは年内の20万人分の製造は可能としているが、さらに大規模な生産体制を構築するには「政府の支援が必要だ」と仲尾社長は話す。
大阪大などと手がけるプロジェクトには25日時点で、臨床試験大手のEPSホールディングスなど13の企業や大学が協力を表明した。しかし海外と比べると治験の状況や生産面で後れを取る。国産ワクチンの開発では、製薬大手や政府も交えた体制構築が急務だ。