●アンジェス(株):2022/11/23 06:01
そこが聞きたい、国産ワクチン開発(その2)
――国の危機管理として自前で作るべきだということですか。
【石井教授】その通りだ。ワクチンは、健康の根幹である戦略物資であるにもかかわらずマスク調達には500億円もの予算が付いたのに、ワクチン開発への国からの補助は2020年春ごろで100億円ほどだった。同時期に欧米がそれぞれ1兆円超を投じたのに比べると100分の1に過ぎない。ワクチン開発で最もお金がかかるのは最終段階(第3相)の臨床試験だ。欧米では数万人、日本では数千人規模で行われる。費用は少なくとも数百億円、グローバルとなると1000億円以上はかかる。
――アンジェスのワクチン開発中止に対し、「補助金の無駄」という見方もある。
【石井教授】初期から、もうけやリスクを顧みずに開発を始めたアンジェスの勇気には敬意を表するべきだ。20年春の時点で何が成功するかを知っている人は世界に誰もいなかった。一方、世界でもメッセンジャー(m)RNAワクチン以外で何千億円も投資して失敗している例が多くある。米国では、トランプ前大統領が「ワープスピード作戦」として複数の企業に100億ドル規模の関連予算を助成したが、成功したのはモデルナだけだった。その後ジョンソン・エンド・ジョンソンが発売にこぎ着けたが、他社は失敗している。だが、モデルナの大成功で、法人税収などで元は取れる。
――国産化する上でmRNAの技術的な課題は。
【石井教授】順調に進んでいると聞いている。速度はゆっくりだが、開発する企業で第3相まで進み厚生労働省への承認申請にこぎ着けようとしており、日本に開発力が全くないというわけではない。