●アンジェス(株):2021/02/21 10:07
<日経新聞:総合1より抜粋>
厚生労働省は20年度第3次補正予算で国産ワクチン支援のために1200億円を計上しており、第一三共、塩野義製薬、KMバイオロジクス、アンジェスのワクチン開発状況に応じて大規模治験の実施費用を補助する。新型コロナの治療薬・ワクチンを含めて、アジア地域で日本が主導する治験を実施しやすくなるように現地病院のネットワーク構築も進める。
ただ日本勢の自社開発ワクチンの実用化には課題も残る。先行する海外製ワクチンの接種によって国内の新型コロナ感染が収束した場合、承認申請に必要な数万人規模の最終段階の治験が実施しにくくなる。海外実施が視野に入るが、欧米大手と比べてワクチンの海外治験に関する経験やノウハウは乏しい。すでに国内で治験を進めている塩野義、アンジェスも最終段階(大規模治験)を始めるメドは立っていない。
日本では公衆衛生の高まりで感染症が減る一方、過去にはワクチンの副作用が社会問題になるなどした。もともとワクチンは医薬品と比べて価格が安くなりがちで、国や企業が産業育成に消極的な時期が続いた。海外では事業再編が進んでおり、世界市場はファイザーを含む欧米4社がシェアの約9割を占める。武田や第一三共といった日本企業は規模で見劣りする。ワクチン分野に詳しい英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は「日本のワクチン政策や産業は世界から立ち遅れている」と話す。
開発競争には乗り遅れたが、東京大学医科学研究所の石井健教授は「海外では日本ブランドが安全という意識はワクチンに対してもある」と指摘。効果や安全性を武器にできれば、後発でも世界の市場を狙えるとの見方もある。コロナ禍をきっかけに中国やロシアがワクチンの開発・輸出に力を入れている状況のなか、日本勢の競争力が改めて問われている。