●アンジェス(株):2022/09/28 08:54
バソミューン社と共同開発を進めている新型コロナウイルス感染症の中等度から重度の肺炎患者の治療薬「AV-001」についての前期第Ⅱ相臨床試験が2022年1月から開始されています。当初は一次完成の時期は、今年5月予定でしたが、臨床試験のデータベース「ClinicalTrials.gov」に、6月1日に、完了予定が2023年5月になる旨の報告がされています。
理由は、米国におけるコロナ感染者数が2022年1月をピークに、2月~4月に掛けて大きく減少したため、中等度から重度の肺疾患の治験対象者が目標症例数の120例の確保が難しくなったことによります。5月中旬以降は、米国でのコロナ感染者数は7万~9万人台となっているので、治験対象者の確保は可能であると思います。
ただ、新型コロナウイルス感染症の変異株に関しては重症化するケースも少なくなってきており、呼吸不全を起こす患者数も減少傾向にあることも事実で、バソミューン社としては今後の開発方針について、新型コロナウイルスによる肺炎の悪化への治療薬としての治験に限定せず、開発当初の急性呼吸窮迫症候全般への治療薬として開発するための方針を再検討することも考えられるので、今後の取り組みに注目していきたいと思います。
アンジェスとバソミューン社が共同開発を進めてきた「AV-001」は、もともと2018年より、全世界を対象に、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品として共同開発してきたものです。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、重症肺炎、敗血症や外傷などの様々な疾患が原因となり重度の呼吸不全となる症状の総称ですが、炎症性細胞が活性化され、肺の組織である肺胞や毛細血管に傷害を与えます。その結果、肺に水がたまり、重度の呼吸不全が引き起こされますが、現在のところ根本的な治療法はなく有効な治療薬の開発が望まれています。
なお、新型コロナウイルス感染症による肺炎の重症化以外に、重症肺炎や敗血症、そして外傷などの様々な疾患が原因となり重度の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者数は米国及びEUで年間約37万人、日本で1万2000人ほどの発症数が報告されています。平均死亡率は40%と高い数値となっているので急性呼吸窮迫症候群の治療薬「AV-001」の早期実用化が求められています。