●アンジェス(株):2021/12/12 08:56
【日本経済新聞】12/12朝刊より抜粋
医薬敗戦、バイオ出遅れ
ワクチンも輸入頼み 貿易赤字、今年3兆円へ!!
日本の医薬品の存在感が低下している。新型コロナウイルスでも国産ワクチンの開発は遅れ、輸入に頼っている。医薬品開発は化合物の合成からバイオ創薬(総合2面きょうのことば)へと競争力の源泉が移る。技術転換に乗り遅れた日本の「医薬品敗戦」は医療制度にも影を落とす。
貿易赤字額が膨らみ始めたのは15年ほど前からだ。財務省の貿易統計によると、医薬品の貿易赤字は6年連続で2兆円を超える。そこに新型コロナワクチンが追い打ちをかけた。21年1~10月はワクチン輸入額が前年同期比で10倍以上のペースに増えた。年間では貿易赤字額が3兆円を超えそうだ。
21世紀に入り主流は低分子薬からバイオ創薬に移った。病気の原因の分子に固く結びつく抗体医薬は効果が強い。がんや自己免疫疾患などが治療できるようになった。薬価は高く、年1000万円を超える抗体医薬も珍しくない。
低分子薬にたけていた日本企業はバイオ創薬に出遅れた。巻き返しは簡単でない。バイオ創薬は幅広く、高度な技術が必要。資金も必要となるが、日本企業の研究開発費は欧米企業に比べ少ない。
創薬の難易度が増し、産学連携も重要になる。欧米は大学の先端的な研究成果を基にスタートアップが起業。初期の臨床試験(治験)を経て大手製薬企業が買収し、実用化につなげる例が多い。投資家が資金を支えて、好循環につながっている。日本は投資家層が薄く、橋渡しを担うスタートアップが育たない。
IQVIAによると、20年の日本の医薬品市場規模は10兆3717億円。バイオ創薬が中心となり、高額な医薬品を輸入に頼るようになれば貿易赤字は一段と膨らむ。
日本は新型コロナワクチンの承認が遅れ、米国の緊急使用といった承認や、治験でのデータ活用に課題を残した。企業が再編によって資金力を高めるだけでなく、国として創薬をしやすい仕組みを整えなければ、日本の医療制度自体を揺るがしかねない。
(草塩拓郎、山田航平)