●アンジェス(株):2021/04/05 05:35
【日本経済新聞】
国産ワクチン実現の課題は?
厚生労働省前医務技監の鈴木康裕氏に聞く(その1)
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鈴木康裕氏は、厚生省(現厚生労働省)の技術総括審議官、保険局長などを経て2017年7月医務技監。20年8月同省退職。21年3月から国際医療福祉大学副学長。
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――国産ワクチン開発促進に向けて、どんな公的支援が必要ですか。
【鈴木】国が企業に出すワクチン開発の補助金は大別すると『研究開発』と『生産体制』が対象となっている。研究開発中の製品の生産体制を構築するのはリスクもあるが、スピードを重視するため、研究開発と生産体制整備を並走させている。
加えて重要な要素は『治験(臨床試験)』だ。発症予防効果を確認するため数万人規模で実施することが必要と考えられている。だが数万人規模の治験を感染者が少ない日本だけで行うのは難しい。
――アンジェスは海外で治験を行うことを検討しています。
【鈴木】海外で治験を行うにはノウハウが必要な上に費用もかかる。患者が多く、しっかりとした審査体制を持つ国で治験を行えるように(日本政府は)支援する必要がある。今後は東南アジア諸国連合(ASEAN)という単位で研究開発して承認するような枠組みの検討も欠かせないだろう。
多くのパンデミック(世界的大流行)はアジアから生じているが、発生国の同意がないとウイルスを他国に持ち込めないなどの制約があり研究開発しづらかった。アジアの国同士で連携し、共同で研究開発や承認する枠組みを作ることで、開発スピードも上げられ、コストも減らすことが期待できる。共同の承認については既に欧州連合では同様の取り組みが行われている。