●アンジェス(株):2020/07/31 04:01
【医薬通信社】(その4)
大阪大学大学院臨床遺伝子治療学:森下竜一教授に聞く
コラテジェンの有用性とHGF遺伝子治療の展望 !!
コラテジェンの特徴について森下氏は、まず、「既存の方法では治療が困難な患者への貢献」、いわゆる「アンメットメディカルニーズへの対応」を強調する。
さらに、「プラスミドの筋肉注射なので、身体への負担が少なく、外来対応も可能」、「バイパス手術や血管内治療に比べてコスト安(コラテジェン2回投与で約120万円)」などの利点を挙げ、「全例調査が終了して正式承認されれば、高齢者や透析患者のような侵襲をかけにくい患者のQOLに大きく貢献できる」と力説する。
森下氏は、コラテジェンの今後の展開にも言及し、「治験で潰瘍改善効果とともに安静時疼痛改善効果も検討しており、効果が認められている」と報告。その上で、「アンジェスで安静時疼痛の臨床試験を進めて、適応拡大を測っていく」考えを示す。
重症虚血肢の潜在患者数50万人と推定される米国についても、「FDAからファーストトラックの指定を受けている。米国の臨床学会からの注目度も高く、是非、早期に臨床試験を再開してほしい」と要望する。
HGF遺伝子治療の今後の展望については、「研究者としての見解」と断った上で、「製薬会社には、慢性動脈閉塞症の潰瘍だけでなく、病態が類似する糖尿病や褥瘡、自己免疫疾患などの難治性潰瘍に対しても遺伝子治療の応用を推進してほしい」と訴えかける。
標的細胞内でHGFを発現させるプラスミドDNAは、難治度の高い疾患に対しては「HGF遺伝子の発現量が少ない」という短所もある。
この短所は、HGFをアデノ随伴ウイルスAVベクターに搭載することで、標的部位での多くのHGFの長期間発現が可能になり解決できる。
ウイルスベクターにHGFを搭載した動物実験では、アルツハイマーや脳梗塞後の認知症、および心不全、心筋症といった心臓領域疾患に対する有用性が認められている。
最後に森下氏は、HGF遺伝子治療の展望として、「プラスミドDNAをベースにした薬剤の適応拡大を図るとともに、アルツハイマー、脳梗塞、心筋梗塞、心不全、ALSなど難治性疾患へのウイルスベクターを活用したHGF遺伝子治療の可能性を探っていきたい」と抱負を述べる。