●アンジェス(株):2020/04/15 06:22
森下竜一ドクター×斎藤糧三ドクター対談(その4)
【斎藤】「ECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)」(重症呼吸不全患者または重症心不全患者に対しておこなわれる生命維持法)に必要な機器も、足りなくなるのでは? といった話もあります。
【森下】今後、ECMO関連の機器が足りている範囲で患者をコントロール出来るかどうかが重要になります。足りなくなってしまうと、その足りない台数分が死者につながってしまいかねません。
【斎藤】インフルエンザと比べるとどうですか?
【森下】季節性インフルエンザの死亡率は0.1%、パンデミックインフルエンザのスペインインフルエンザは死亡率2%、新型コロナウイルスの死亡率は数パーセントというデータもありますが、無症状や症状が軽い感染者を含めれば、死亡率は1%未満と考えられています。しかし、ハイリスク患者(高齢者や何らかの併存疾患を抱えた患者)ではやはり高い確率で死亡します。死亡率に注意が行きがちですが、新型コロナウイルスはインフルエンザと比べ、重症化してからが長いというのが実は最大の問題です。治るまでに平均約14日と言われています。対して新型インフルエンザは数日です。この違いは何を意味するのかというと、新型コロナウィルスに感染して入院し、呼吸管理を必要とする重症者が1000人いたとすると、それを新型インフルエンザ患者に置き換えると6000人の重症入院患者がいることに相当するということです。そのため、収容キャパシティを超えて、医療崩壊になります。
【斎藤】院内感染も話題になっていますね。
【森下】院内感染には2種類あります。ひとつは患者から発生する場合。こちらは、ある程度わかっていれば防護服の着用などで防げます。もうひとつは、本来感染が起こるべきところではないところで発生する場合。研修医が感染した事例などです。これにより、研修医やその関係者が2週間隔離されてしまいました。すると、いっぺんにドクターや看護師が40〜50人隔離されてしまい、数が足りなくなってしまいます。しかもECMOを実施する場合、最低でも8人の医療従事者を要しますから、いっきに人手不足になってしまうのです。結果、ドクターや看護師が疲弊し、院内感染がさらに進むケースも考えられます。