●アンジェス(株):2020/04/15 06:20
森下竜一ドクター×斎藤糧三ドクター対談(その6)
【斎藤】富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ治療薬「アビガン」も注目されていますが。
【森下】アビガンは副作用(胎児に対する催奇形性)もあるので、投薬には注意が必要です。ただ、軽症の方には効果があると報告されているので、症例を選んで使用すべきと思います。ワクチンが完成するまでにはまだ時間がかかりますので、対症療法を色々見出していく必要があります。ただ、ワクチンが完成したからといって100%効果があるわけではありません。インフルエンザのワクチンでも、効果は50%ほどと言われています。
<開発に時間が要する理由は?>
【森下】まず動物実験で、安全性と抗体がきちんと出来るのかの確認をするまでに時間を要します。その後、ヒトでの臨床試験(治験)を経て、国の認証を得るので時間がかかるのです。しかも、日本には政府主導の開発施設がないので、各国にくらべ開発に時間がかかるのです。
<日本以外の国はどうでしょうか?>
【森下】たとえばアメリカの場合、軍がバイオテロ対策のためにウイルスの研究開発体制を持っています。そのため、開発が急ピッチに進んでいます。
<民間企業は積極的に開発を進めないのでしょうか?>
【森下】それは難しいと思います。なぜなら利益がそれほど見込めないからです。エボラ出血熱に対するワクチン開発がなかなか進まないのも、利益が望めないからと言われています。
<プロフィール>
◆森下竜一ドクター
1962年生まれ。1987年、大阪大学医学部卒業。1991~94年、米国スタンフォード大学循環器科研究員。その後、大阪大学助教授大学院医学系研究科遺伝子治療学を経て、2003年より大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授。著書に『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』(青春出版社:共著)などがある。
◆斎藤糧三ドクター
1973年東京生まれ。医師。日本機能性医学研究所 所長。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008 年、日本機能性医学研究所を設立。