●アンジェス(株):2020/04/08 04:12
<星 良孝=ステラ・メディックス>(その2)
■新型コロナウイルスの治療薬としての応用も進める!!
森下氏によると、これまで10年以上の間にDNAワクチンは12種類を臨床試験で約1400人に投与しており、安全性への懸念が一度も生じなかったという。こうした情報も参考として、緊急事態であることも踏まえて、各国の規制当局と折衝の上で、実用化の道筋を探ることになると森下氏は説明した。
鳥インフルエンザに対するDNAワクチンの開発例から見ると、2回の投与で6割ほどが抗体を獲得できている。投与回数を増やすことで、抗体陽性の人を増やせるという考え方になるとアンジェスは説明する。投与対象者の人数や優先的に対応すべき医療従事者や自衛隊などのグループといった条件を踏まえ、公衆衛生の観点から国が投与回数を調整する形になると推定される。当面、生産体制の整備、感染者の人数に対応したワクチンの用意なども課題になる。
アンジェスでは、DNAワクチン技術を用いて治療法の確立も進める計画だ。DNAワクチンをウマに投与し、ウマの免疫反応によって作られる抗体を含む抗血清製剤を治療に用いる。従来、ハブ毒やボツリヌス毒素の治療のための抗血清製剤を製造する技術が確立されており、これを応用する。抗体タンパク質の精製が不要で、病原体も使わないため、緊急時の対応に適しているとアンジェスは考えている。この抗血清製剤は製造の着手から3カ月ほどで供給可能となる見通しだ。こちらも各国の規制当局と折衝の上で実用化の道筋を決めていくことになる。
アンジェスでは、承認を管轄する厚生労働省の加藤勝信大臣、開発を進める大阪大学を管轄する文部科学省の萩生田光一大臣と連絡を取り合っているほか、そのほかの連携先の製薬企業などとの調整も進めているという。新型コロナウイルスの感染の広がりがどれくらい持続していくかにもよるが、状況に合わせて製品の供給を急ぐように調整を進めるとしている。