●アンジェス(株):2020/08/25 04:44
新型コロナ:米エール大・岩崎教授に聞く!!(1)
【Q】新型コロナに対する免疫応答でこれまでに何がわかり、何がわかっていないのか。
【岩崎】私の研究室では免疫応答がどう感染防御に働いているのか、あるいは病原性を引き起こしているかについて研究している。エール大学の病院の100人以上の患者さんの免疫応答の長期的な解析を行った結果、炎症性のサイトカインを多く産生する患者さんでは病態が悪化することがわかった。
病気に影響を与える要因についても調べている。男性は女性よりも新型コロナによる死亡率が高いのだが、女性の方が男性に比べウイルスに対するT細胞(免疫細胞の一種)の反応がよいことがわかってきた。免疫応答の違いから病状の違いが生ずると考えられる。
【Q】炎症性のサイトカインとはどんな物質か。
【岩崎】重症化する患者さんではウイルス感染に関係のない、寄生虫に対するサイトカインがたくさん出るのが特徴的だ。それ以外にも感染後早い段階(およそ12日以内)に出る物質の一つがインターロイキン18で(炎症は起こすが)ウイルス防御には効果がない『悪い』サイトカインだと言える。こうした物質を抑えれば重症化防止に役に立つ可能性がある。この仮説に基づく臨床試験が進行中でいずれ結果が出る。
【Q】感染しても無症状の人が多数いることがわかってきた。新型コロナとは異なる、普通の風邪のコロナウイルスに過去に感染して生じた免疫の「記憶」が寄与しているとされる。
【岩崎】いくつかの国で新型コロナ出現前に採取した血液を調べたところ、新型コロナに対し免疫応答が生じたと報告されている。T細胞に過去の感染の記憶が残っている証拠が出始めており、それが確かなら有効な防御になるとは思う。
ただ、記憶のおかげで無症状のままでいられるといえるはっきりした証拠はまだない。世界の多くの研究者がこの課題の解明に取り組んでおり近い将来に明確な証拠が出てもおかしくない。