●アンジェス(株):2020/04/15 06:26
森下竜一ドクター×斎藤糧三ドクター対談(その2)
【斎藤】遺伝子治療薬のメリットとは?
【森下】われわれは、環状のプラスミドDNAという遺伝子をベクター(運び屋)に使いますが、プラスミドDNAによるDNAワクチンは大量生産出来るのが特徴です。また、不活化ウイルスをワクチンとする方法(あるいは、弱毒化ワクチン)ではウイルス入手後不活化の過程とその生産が6カ月程度かかるのに比べ、DNAワクチンではウイルスの遺伝子情報だけが必要なので、3週間程度という短時間で開発出来ますから、感染が急激に拡大する新型コロナウイルスに有効であると考えます。
また、製造に関しても不活化ウイルスの場合、「有精卵」と、呼ぶ、ヒヨコになる前の卵を使うので、そもそもワクチン製造用の有精卵を得るために時間を要する上、数も限られているためパンデミック(世界的大流行)なウイルスには向きません。われわれの研究グループでは、3月のはじめにワクチン開発に着手していますが、3週間ほどで完成しました。また、製造もプラスミドDNA(細胞の染色体とは別に、複製・増殖する遺伝因子の総称)を大腸菌に入れ、大腸菌を大きなタンクで大量に増やして抽出すればよいので、1か月で数十万人分の生産ができます。
【斎藤】現在はどのような開発フェーズですか?
【森下】現在は、動物実験中です。動物に抗体ができれば、9月を目処にヒトでの臨床試験を実施する予定ですが、更に前倒しすることを検討しています。年内に、百万人の方にワクチン接種が出来るようにするのが目標です。
【斎藤】新型コロナウイルスを制圧するにはワクチンが有効なのでしょうか? 集団免疫の獲得によって制圧できるのでは、という意見もありますが…。
【森下】集団免疫は、今回の新型コロナウイルスに関しては、必ずしもうまくいかないという危惧があります。インフルエンザと異なり、新型コロナウイルスでは少ないウイルス量で感染し、活動量が低く、既に発表もされていますが、治癒された方でも抗体が出来にくいという事情もあります。ゆえに、再感染する人がいます。ですから、ワクチンを使ってしっかり抗体をつくる必要があります。