●アンジェス(株):2020/04/03 18:07
<一般社団法人:予防衛生協会HP紹介>
期待が高まるDNAワクチン!!
これまでのワクチンは、不活化ワクチン、弱毒生ワクチン、サブユニットワクチン、ベクターワクチンといった形で、免疫源となるウイルスタンパク質を、接種して免疫を誘導してきた。このような体外から投与する、ワクチンとは異なり、DNAワクチンは、ウイルスタンパク質遺伝子を投与することにより、免疫源のタンパク質は体内の細胞で産生させるという、まったく異なるタイプになる。
DNAワクチンは、ワクチン遺伝子を組み込んだプラスミドを、大腸菌などの細菌をタンク培養で増殖させて製造する。プラスミドは細胞質内で自律的に増殖するDNAである。プラスミドを遺伝子の運び屋としたのが、プラスミドベクターで、遺伝子治療で広く用いられている。プラスミドベクターでは、GMP(医薬品の適性製造基準)にもとづく製造方式や、ヒトでの安全性を確認するための条件が確立されている。DNAワクチンは、プラスミドベクターにワクチン遺伝子を組み込んだものであるため、実用化の条件はほとんど揃っている。
DNAワクチンには、いくつかの利点がある。細胞培養や卵で製造するワクチンと異なり、DNAワクチンは、タンク培養で迅速に大量生産できる。たとえば、インフルエンザワクチンは前年の流行から予測したウイルス株を用いて製造されているため、出来上がったワクチンが翌年の流行ウイルスに対応するとは限らないが、DNAワクチンであれば、直ちに流行株を用いたワクチンが製造できる。製造法が単純で容易なため、いくつもの候補抗原のDNA をすぐにワクチンとすることができる。DNAは熱に強く、冷蔵保存の必要がない。
DNAワクチンの投与法としては、筋肉内注射が一般に用いられてきた。最近では、電気パルスによるエレクトロポレーションも行われている。これは、筋肉内注射後に針電極でミリ秒の電気パルスをかけて、細胞膜の透過性を高めて、DNAの細胞内への取り込みを高めるものである。
多くの利点があるため、DNA ワクチンは理想的なものとして、1990年代から数多く開発されてきたが、人体用に承認されたワクチンはまだない。現在、トリインフルエンザ、エボラ、C型肝炎、HIV、乳ガン、肺ガン、前立腺がンなどのDNAワクチンについて臨床試験が行われている。