●アンジェス(株):2024/07/11 08:04
Tie2受容体アゴニスト(AV-001)は、カナダのオンタリオ州トロントにあるサニーブルック病院の研究所で発見・設計され、バソミューン社によって開発されているものですが、2018年7月にアンジェスと急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患の治療薬であるAV-001の共同開発に向けた契約の締結をしています。
この両社の共同開発に向けた契約の内容は、バソミューン社が創製したTie2受容体アゴニストの化合物について、全世界を対象とした開発を共同で進め、開発費用と将来の収益をそれぞれ折半する内容となっています。また、今回の契約は急性呼吸不全のみならずTie2受容体アゴニストが有効性がある全ての疾患を対象としてして契約されたものです。
Tie2受容体アゴニスト(AV-001)は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象疾患として開発されたものですが、これらの症状は主に、肺の毛細血管から血液成分等が漏れ出し、肺胞によるガス交換を妨げたりすることにより引き起こされると言われています。AV-001は血管にあるTie2受容体と呼ばれる分子に結合することで、血管の漏出を抑制する働きを持つと期待されます。
AV-001については、コロナ感染症による肺炎患者が増大したことから、2022年1月より米国で前期第Ⅱ相臨床試験として取り組みましたが、重症化リスクが低いオミクロン株への置き換わりが進んだことで患者確保が困難となり、AV-001の対象疾患を「インフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸窮迫症候群に広げる試験計画の変更」を米FDAに申請し2022年12月に承認を受け、これを機にアンジェスはAV-001の臨床試験を第2相臨床試験として位置付けています。
その後、5月17日~22日に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された米国呼吸器学会における呼吸器イノベーション・サミットの演題には、バソミューン社の急性呼吸窮迫症候群を対象としたAV-001が演題に選出され、バソミューン社の科学共同設立者であるハロルド・キム博士が講演しています。
続いて5月29日には、AV-001が米国FDAより新薬の優先審査制度であるファスト・トラック指定を取得しています。このことはAV-001が急性呼吸窮迫症候群の治療薬として期待されていることを示していると言えます。