●アンジェス(株):2023/10/25 09:48
アンジェスが、ゲノム編集技術を用いた遺伝子疾患治療に挑むため、エメンド社を子会社化したのは2020年12月のことです。では、なぜエメンド社を買収し子会社化したのかですが、アンジェス創立以来20余年の年月をかけて実用化に至った製品は、条件及び期限付き承認となったHGF遺伝子治療用製品コラテジェンのみであったことが背景にあると思います。
それだけの年月をかけ本年5月に条件解除を求める本承認の申請が受理された取り組みの意義は大きいのですが、一方、医薬品開発をめぐる競争は国際的にも熾烈となっており、医薬品の世界市場では日本製品は10%を切っている現状にあり、山田社長の胸の中には「その小さな領域だけのビジネスに留まることで良いのか」という問題意識があったのだと思います。
アンジェスがエメンド社を子会社化した当時の人員は50人程度でしたが、現在は115名となっています。エメンド社はワイツマン科学研究所のコアグループによって設立されたものですが、研究開発に当たる科学チームは、タンパク質工学、分子生物学、および遺伝子編集システムの専門家で構成されており、博士号を持つなど優秀な人材が80名近くも集結しています。
ですので、人件費を含む研究開発費はパイプラインの開発進展により増加するものと予想されますが、それを単に「金食い虫」と見るのは悲観的な見方だと思います。アンジェスは8月14日、関東財務局に提出した四半期報告書でエメンド社の取り組みを次のように報告しています。
「エメンド社は、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼを探索・最適化するOMNIプラットフォーム技術を確立しており、血液、眼科、肝代謝などの疾患領域についてパイプラインを構築しており、最も進んだELANE関連重症先天性好中球減少症を対象としたプロジェクトは米国での臨床試験実施に向けFDAと協議を開始し、2023年度中の米国での臨床試験開始に向けた準備を進めております。同社はゲノム編集技術の開発をとおして、遺伝性希少疾患に加え様々な疾患のゲノム編集技術による治療を検討しております」と。