●アンジェス(株):2023/08/02 09:09
エメンド社では、ELANE関連重症先天性好中球減少症を対象とした臨床開発を進めるために、アメリカ食品医薬品局(FDA)と臨床試験開始の申請に向けた協議が進んでおり、エメンド社の社長兼CEOであるデビッド・バラム博士が企業プレゼンテーションの中で発表しているように、2023年第3四半期の時期には申請を行うものと思います。
FDAでは、すでにゲノム編集による治療法の確立についての臨床入りの申請を扱ってきた経験もあるので、エメンド社の臨床入りの申請も、それほどの審議時間を賭けないで承認決定を出す可能性もあると思います。
ですので、承認入りについては、エメンド社のホームページの中の「私たちの科学」の項で開発パイプラインの紹介と併せて、新たに「患者さんのために」という欄を設けていますが、その中で「2024年に最初の臨床試験を開始する予定である。FDAの承認を待って」と報告されていますので、臨床試験の諸準備を整えて、2024年の比較的早い時期に、ELANE関連重症先天性好中球減少症の臨床入りが開始されるのではないかと思います。
以前、アンジェスの広報ブログでも紹介されましたが、ELANE関連重症先天性好中球減少症のELANEとは、好中球エラスターゼ遺伝子の呼び名を指します。好中球は、通常は体の中で造血幹細胞から絶えず分化・成熟していきますが、ELANE遺伝子に異常があると、好中球に分化しようとする細胞でこの遺伝子が働き始めた時に、異常なタンパク質が作られることによって好中球が成熟できなくなり、好中球数が減少します。
好中球は細菌感染に対して体を守るという大切な役割を担っているので、好中球が少なくなると、感染制御ができず、感染を繰り返したり、感染症で死亡することもあります。このような、遺伝子の異常により有害な働きを獲得したタンパク質ができることによって発症する疾患については、ゲノム編集技術によって、異常な遺伝子を削除して有害なタンパク質ができないようにする必要があります。
エメンド社で開発中の治療法は、患者から採取した血液から造血幹細胞を分離し、体外でゲノム編集を行った後、患者に輸注して戻し、ゲノム編集された自家造血幹細胞が患者の骨髄に生着し、一度の治療によって、一生に亘って好中球数を正常値に維持することが期待されている、ゲノム編集技術なのです。