●アンジェス(株):2022/06/26 07:14
◆脳に超音波ビーム、がんや認知症にも、「集束超音波治療」は
脳の治療に革命をもたらすか(その2)
<脳血管の関門をどのように開くのか>
集束超音波は最近考案されたものではない。1950年代から医療行為に使われてきた。15年前からは、子宮筋腫や前立腺がんの破壊、前立腺肥大の治療に使われている。
今日、この治療法が適用されている病気や症状は160以上にのぼる。米食品医薬品局(FDA)が承認した技術の中には、パーキンソン病のふるえや一部の運動症状の治療に用いられているものもある(編注:日本も同様)。
ただしこれらの活用法は、血液脳関門を開くこととは関係がない。
血液脳関門という言葉は壁を連想させるかもしれない。だが、これは単一の構造物ではなく、血管の内側で互いに固く結びついた細胞のネットワークだ。これらの細胞は、先に述べたように、重要な器官を守ると同時に、脳疾患を治療する大きな障壁でもある。
2015年、カナダの神経外科医トッド・メインプライズ氏とサニーブルックの科学者らは、集束超音波を使って固く結びついた細胞を解きほぐし、頭蓋骨に穴を開けなくても、安全に血液脳関門を開いてみせた。この技術によって、薬を脳内に入れるのに十分な時間を確保できる。また、この処置は完全に可逆的であり、関門は処置後24時間以内に自然に閉じられる。
サニーブルックのチームは、2021年10月にも偉業を達成している。放射性タグをつけた治療用抗体が、関門を越えて乳房から脳に転移したがん細胞に届くまでを追跡したのだ。
薬物送達を測定するこうした技術は医学を一変させるだろうと、集束超音波治療財団の創設者兼会長のニール・カッセル氏は言う。「この技術は、MRスキャンが診断に革命を起こしたのと同じように、治療に革命を起こすでしょう」