●アンジェス(株):2020/12/28 12:52
12月18日付けの「Science」6523号に記載された新型コロナウイルスの変異体の特性についての記述では
「この変異体は上気道上皮細胞への感染に優れており、祖先のウイルスよりも多く複製します。証拠は、動物モデルにおける病原性へのわずかな変化があったとしても、それを示しています。したがって、ウイルスは、より大きな病原性ではなく、より大きな伝染性のために進化したように見えます。この変異により、現在開発中のワクチン候補の有効性を変えることなく、新しいウイルス変異体が抗血清を中和しやすくなります。」とされています。
ウイルスの感染原理はウイルス表面のトゲに当たるスパイク(S)タンパク質が人間の細胞に侵入する際の「鍵」の役割を果たし、人間の細胞表面にある受容体と言われるアンジオテンシン変換酵素Ⅱ、略してACE2と呼ばれる鍵穴に、トゲに当たるスパイクが刺さると、そこからウイルスが細胞に入っていき、細胞の中でウイルスが増殖していくのです。
新型コロナDNAワクチンとは、ウイルスの鍵の部分の遺伝子構造がわかるので、この遺伝子の情報を、プラスミドDNAという環状の遺伝子を発現させるベクター(運び屋)に入れてやって、ワクチンを体内に投与すると、体内で鍵に当たるSタンパク質だけができ、その鍵に対して抗体ができるのです。
この場合、ウイルスそのものは一切使わないから安全で、しかもウイルスも必要がなく、ウイルスの遺伝子情報さえわかれば、DNAワクチンはすぐに作れるのです。
なお、ウイルスの変異体の特徴としては、ウイルスの鍵にあたるトゲの部分の遺伝子情報の変化は一部の例外を除いて報告がないことから、現在開発しているプラスミドDNAワクチンの効力には変化がないのです。
またDNAワクチン以外の遺伝子ワクチンの特質はウイルスのカギに対する抗体を増やす特徴では基本的には同じなので、現段階の新型コロナウイルスの変異体への有効性は保持していると言えます。