●アンジェス(株):2023/03/28 08:03
【Forbes JAPAN】2023.03.25掲載
「ひとりでも多くの患者を救済したい」 強い信念が
ゲノム・ビジネスを加速させる(その3)
「2018年にイスラエルでデイビッドと出会いました。そしてエメンド独自の『新たなヌクレアーゼ(遺伝子切断酵素)発見プラットフォーム』によって、ゲノム編集の障壁となっているオフターゲット効果を回避するアイデアを聞いて、大きな衝撃を受けました。私はその方法こそがゲノム編集技術のブレイクスルーになると直感しました」
バラムもまた、ゲノム・ビジネスには強力なライバルが多いことを常々感じており、米国で臨床開発を進めるためのノウハウを求めていたタイミングだった。目指すゴールは同じだ。エメンドは先端ゲノム編集技術をもとにした遺伝子治療用製品の開発力を提供する。一方アンジェスは20年来の遺伝子治療用製品の開発経験で培った国際的規制を踏まえた前臨床、CMC(化学製造管理)、臨床開発のノウハウ、およびGMP(医薬品製造・品質管理基準)のノウハウなど、商業化に必要な知見全般を提供する。しかし、2社が手を組んだ理由はただそれだけではなかった。
<先端技術をより多くの人に届けたい>
「同じ研究畑出身ということでデイビッドに親近感はありましたが、対話を重ねるうちに、“革新的な技術を開発し、より多くの人々がアクセスできる状態にしたい”というビジョンが、私が長年考えていたことと一致していたことに驚きました」
山田がそうした思いを胸に秘めていた背景には、希少疾患を抱えた小児患者の記憶があった。
「治療に必要な薬が欧米では手に入るのに、日本では未承認で手に入れることができませんでした。お子さんの両親は米国経由で薬を購入するために、街頭募金で多額の寄付を集めざるをえない状況だったのです。これはおかしい。たとえ国内に数人の患者しかいないとしても、困っているのなら助けたい。私はすぐにその薬の日本への導入を決意しました。
『こんな希少疾患に対してよくやってくれました』と感謝する親御さんの姿。その光景はいまも私のパワーの源です」