●アンジェス(株):2021/04/06 05:12
国産ワクチン、なぜ出てこない?
塩野義製薬の手代木功社長に聞く(その3)
――そうした状況で、塩野義のワクチン開発はどのような段階にありますか。
【手代木社長】2020年12月に治験を始めて、生産体制の構築も同時に進めています。4月からは生産設備を増強して、年間3000万人分のワクチンをつくれる体制を2021年中に整えます。ただ、先ほどお話ししたように、現時点ではフェーズ3を実施することが難しくなってきている点がネックなのです。そのため、しっかりデータを取ってモニタリングをするのでフェーズ3の代替手段を認めていただけないかと、国に相談させていただいています。
――国産ワクチンは安全保障上の観点からも重要だと指摘していますね。
【手代木社長】例えば変異株の問題があります。インフルエンザウイルスも毎年、自然変異しています。世界保健機関(WHO)がそのシーズンに流行するのはこのウイルス株ではないかという予想を出しています。ワクチンメーカーは、それに合ったワクチンをつくっているんです。
日本で毒性の強い変異株が新たに出たとしましょう。そんなときに、日本株向けのワクチンを海外メーカーが迅速につくってくれるでしょうか。また、創薬国である日本が、新型コロナのワクチンを自らつくらず、海外から買い占めるような行為には批判がつきまといます。
国産ワクチンを提供できない現状では、国民を守るために政府ができる限りのことをして人数分のワクチンを確保するのは正しいと思います。しかし、この先もそれを続けていいのでしょうか。むしろ、世界的に見れば、日本はワクチンを供給する側に立つべきですし、その力はあります。世界も日本にそう期待しているのではないでしょうか。
中国は、アジアの国々に対してワクチンを供給することで関係を強化しようとしています。困ったときの助けがあってこそ、平時の関係が強化されるのです。我が国も、そういうことをもっと考えてもいいのではないでしょうか。