●アンジェス(株):2024/04/19 08:30
CRISPRキャスナインは二人の女性研究者によって2012年に開発されたのですが、そのゲノム編集がこれまでより短時間で簡単に標的とするDNA配列を切断できる画期的な技術として評価され2020年にノーベル化学賞を受賞しています。
これを機に、ゲノム編集による人への治療法の確立が本格化し、現在はオフターゲット効果を低減する技術開発に取り取り組み、人への臨床試験に取り組んでいる企業が幾つかあるようです。
2023年11月には、このCRISPR・キャスナインの手法によるゲノム編集で、遺伝性の血液疾患「鎌状赤血球貧血症」に対応する治療法について、米バイオ企業のバーテックス・ファーマシューティカルズとスイス拠点のクリスパー・セラピューティクスが共同開発してきましたが、2023年11月には英国で、そして同年12月には米国でも承認されています。
鎌状赤血球貧血症は本来は円盤状の赤血球が三日月のように変形する病気で、変形した赤血球が血管に詰まり、激しい痛みや臓器損傷が生じます。この疾患に対する治療法は、患者から採取した造血幹細胞をゲノム編集技術で遺伝子改変し、それを注射投与で体内に戻すことで治療効果を得られる方法です。
ゲノム編集による治療法が承認されたことで、ゲノム編集への関心が高まっていますが、アンジェスの子会社であるエメンド社がゲノム編集のために開発したOMNIヌクレアーゼ(OMNI-A4)の非独占的使用権について、スウェーデンのアノッカ社とライセンス契約を締結したことを3月14日のIRで発表しています。
アノッカ社は、従来の手術療法、薬物療法、放射線療法では救済できなかった固形がんに対して、T細胞受容体改変T細胞(TCR-T)療法を世界に先駆けて開発研究に取り組んできました。今回、エメンド社のOMNIヌクレアーゼを使ってオフターゲット効果を解消したゲノム編集を活用して、安全性の高い治療法を開発することとなり、2024年の臨床開始に向け開発を進めています。
アンジェスは4月4日の広報ブログで「エメンド社とアノッカ社ライセンス契約についての補足説明」をしていますが、その中で「今後、エメンド社のOMNIヌクレアーゼが広く世界中で使用されるようになる可能性が出てきましたので、積極的にライセンス活動を進めて参ります」と報告しています。